痰壺が必要だった理由は?

健康・運動
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汚い話で恐縮ですが、『陸軍と厠(かわや)』という本の中に『陸軍では兵営内に設置する「痰壺」の設置基準を兵員10名に対して1個を定数としており、兵営内の各務班内のほかに廊下等に設置された。「痰壺」内には四分の一ほどの水を入れて、水は毎朝取り替えて、排水は「厠」に捨てる。』と書いてありました。

多くの人員が健康に暮らすためには衛生面に気をつけなければならないと、日清戦争のころから消毒やトイレ(厠)のことを研究し、規則を作っていたそうです。戦う前に伝染病で将兵が戦えない状態になってはならないということです。

私が子どもの頃にも痰壺はあり、駅のホームで見かけていました。大人の方が痰を吐いているのを見たこともありますが、私は使った記憶がありません。今は痰壺を見かけなくなりました。

痰壺はなぜ必要だったのでしょうか?

結論

痰が絡む人が多くいて、地面に吐き散らさないように痰壺が用意されていました。駅のホームもその対象の一つです。

痰が絡むとは何?

喉や気道に粘り気のある分泌物が付着し、咳をしてもすっきりと排出されない状態を指します。体内に侵入した異物(ウイルスや細菌)を排出するための機能で、健康を維持するための体の仕組みです。風邪をひいたときに、痰が絡む経験はあるのではないでしょうか。

痰壺省令

明治37年2月、内務省令「肺結核予防ニ関スル件」では、第一条で「学校,病院,製造所,船舶発着待合所, 劇場,寄席,旅店其の他地方長官の指示する場所には 適当箇所に唾壺を配置せよ」が出されました。明治から肺結核を予防するための対策として「痰壺」を設置することを定めていたわけです。

肺結核の罹患者

明治よりもあとのことになりますが、昭和14年当時は、結核で死亡する者は1年間に十数万人に達し、死因の首位を占め、人口10万人対の死亡率は200人を越えていた。しかも患者や死亡者は青年に多く、結核は国民衛生上の最大の課題であったそうです。一方、2022年に、新たに結核患者として登録された者の数は10,235人で明らかに減少の傾向にあります。

まとめ

痰が絡む原因は、肺結核のほかに、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、肺がん、誤嚥性肺炎、急性咽頭炎などもあります。

医学の進歩により肺結核を疾患している方が減り、衛生意識が向上し個々のマナーが整い(ティッシュで痰を包むなど)、結核予防法の改正により痰壺の設置に関する規定が2005年に削除されたなど複数の理由により、痰壺が置かれなくなったと考えられます。

それでは、また。

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